山王物件① 480万円の値引き交渉

5月17日。妻の出産予定日まで、あと190日。

新宿御苑前にあるサンマルク。ここで山王物件の不動産仲介業者を待っていました。銀行の仮審査を申し込むためです。「お待たせしました」仲介業者が入ってくる。「本日は住宅ローンの仮審査について説明させて頂きます。まず、今回の物件を購入する場合の総費用の概算がこちらになります。」そう言いながら、一枚の表を見せてくれました。物件の本体価格3,980万円と、仲介手数料が135万円、その他登記費用やローン保障料といったいわゆる「諸経費」が列挙されており、総費用概算は約4,300万円となっていました。不動産購入に諸経費が必要なのは知っていましたが、本体価格が大きな金額であるため、数パーセントの諸経費も大きな物となります。

「諸経費も住宅ローンに組み込まれる方も増えてきていますが、どうなされますか。」「いえ、諸経費は現金で払います。頭金も二割入れる予定です」「わかりました。仮審査から本審査に移るときに金額が少なくなるのは問題ありませんが、増えると再審査となるので、一旦は頭金無しの3,980万円で審査を申し込んで頂きたいと思いますが、宜しいですか」「はい、あとで変更可能なら問題ありません」「では、こちらが仮審査用の用紙となります。身分証明書、源泉徴収票、認印、保険証はお持ち頂いてますか?」「はい、持ってきています。これです」「有難うございます。それでは、用紙に必要事項の記載をお願いします。」名前、住所、勤務先、年収、買い入れ希望額、返却年数等を埋めていきます。記入時間は15分ほどで終わりました。

売主は住宅ローンの返済に苦しんでいた

「ありがとうございます。では、こちらで仮審査の申し込みをおこなわさせて頂きます。あと、宜しければあの物件の説明を行っても宜しいでしょうか。」特に断る理由はありません。「はい、私も真剣に検討していますので、聞きたいです。お願いします」

「では、あの物件を私共としても、大元様にお買い上げ頂きたいので、売主様の情報を提供させて頂きます。あの山王の物件は当初7,500万円で購入されたもので、ローンの残債がまだ1,600万円残っています。売主様は息子夫婦が生んだ孫の世話をしたいということで、川崎にあるマンションを購入されようとしています。そのマンションが1,680万円。山王の物件を売り払って新しいマンションの購入費にあて、売却益を300万円程つくり預金にしたいと考えられています。物件の売買にはこれに仲介手数料が発生するので、最低でも3800万円以上で売らなければいけないという状況にあります。購入一歩手前にいったひとがいて3,880万円で交渉が成立していました。ですから、3,880万円までの値引きは成立する可能性が高いとお考えください」なるほど、こんな風に売主が幾ら以上で売らないといけない状況なのかといった、情報も教えてくれるんですね。

更に情報提供は続き「こちらがあの物件の登記内容になるのですが」と言いながら、山王物件の登記謄本を見せてくれました。「登記謄本を見ると、抵当権がどのように設定されているかがわかります。現在あの物件には二つの抵当権が設定されています。一つ目は売主様が購入時に住宅ローンを借りる際に設定されたものです。二つ目は、最近住宅を担保としてお金を借りられています。その額が一千万円。」多くは語られませんでしたが、ピンときました。住宅ローンを払うのが厳しくなったのか、生活費にあてるためか。どちらにしろ借金を借金で返す状態になっていたようでした。恐らくは孫に近いところに住みたいというの建前で、本音は借金をまっさらにして、新しい生活を始めたいのでしょう。私が内覧で訪問した時に、電卓を握り締めていたのは「価格交渉して、とっとと売りたい」という気持ちの現れだったのでしょう。

「これが、売主様の状況です。恐らくはこれより低い額では交渉は成立しないと思います。」売主側の状況はわかりました。しかし、建蔽率、容積率をオーバーしているということもあり、今後売却する時に不利になるかもしれません。この頃の私は不動産仲介業者に不信感を持っていたこともあり、今回の建蔽率、容積率オーバの件も他業者から聞いたものだったので、「騙されるところだった」と心情的にイラっときていた所がありました。

3,800万円以上で売りたいというのは、あくまでも売主側の都合であって、銀行ローンが通らないなどの不都合がある物件なら、もう少し減額して売るのが適切ではないか、と思い「3,500万円なら買います」と、強気な数字をぶつけました。仲介業者は頭を抱えます。

「買っていただきたいのは山々ですが、その額では売主様は納得されないと思います・・・」顔全体に「困った」という感情が浮かび上がってきています。ただ、本当に銀行ローンを使える物件かわかりませんし、その辺りがわからないと4,300万円の買い物は出来ないと思いました。それに、まだ妻の出産までは余裕があるし、あの物件はローン審査のこともあって中々買い手が付かないようなので、そんなにすぐには決まらないだろう、時間が立てば売主側も値引き幅を広げてくるかもしれません。そんな思いもあり、一度「保留」する気持ちで「3,500万円」という希望額を伝えて貰うことにしました。


大元 隆志

大元 隆志

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